続・素朴な疑問
(17)

世間はなぜハッカーをもてはやすのだろう?

 世間はなぜハッカーをもてはやすのだろう。
 日本の中央省庁が公開しているホームページが、ハッカー(正確にはクラッカーと言うべき)による不法行為によって軒並み書き替えられている。アメリカでは、ポータルサイトが集中的なアクセス攻撃を受け甚大な被害を被っている。こういった被害を未然に防ぐにはどうしたらよいか、今や緊急の対策が求められているのは周知のとおりである。

 TVを見ていると、元ハッカーと称する若者達が聴聞会で居並ぶFBI幹部から意見を求められている。まるで高い技術力を持った若者という扱いだ。金融市場を混乱に陥れるのはいとも簡単と豪語する彼らの断定的な言葉にFBI幹部連中は盛んにうなずいている。一方、コンサルタント会社でも顧客のコンピュータを守るためにハッカーを雇って対応中であるという。その若いハッカーが記者のインタビューに答えたりしている。

 しかし何か違うのではないか。彼らは本当に高い技術力を持っているのだろうか。単にある一つの分野の知識に詳しいだけの存在ではないのか。そういった知識はもっと別のものに向けられて初めて高い技術力となるのであって、ハッキング行為なんぞに向けるようでは決して高い技術力の持ち主とは思えない。

 聴聞会でのこのハッカーの断定的なもの言いを聞いていると、原子力発電は「絶対安全です」というどこぞで聞いたことのあるあの無責任な発言と同一水準にあるように思えてならないのである。これは実際にやってみないと(やっては困るが)どうなるか分からない要素を多く含んだ分野なのだ。あくまでも最悪の事態が起こる可能性があるとして論ずるべきであろう。

 私はこういった対策に元ハッカーの力を借りてはならないと思う。立派な技術力と高い倫理観を持ったプログラマなら他に沢山いるはずである。ここは時間を掛けてでも、真の意味でのハッカーの力を借りるべきであろう。元ハッカーの姿をTV画面で見て「格好いいなぁ」とあこがれを持つ輩がいないとも限らない。このままでは将来この何倍にも当たる多数の新たなハッカーを誕生させてしまうことになるのではないか。

 世間はなぜ、あのようにハッカー達をもてはやすのだろう? あぁ、今夜も眠れそうにない。■