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人はコンピュータ画面をどんな字体で見ているのだろう?
人はコンピュータ画面をどんな字体で、つまりどんな字種と文字サイズを用いて見ているのだろう?
テレビの報道番組などでコンピュータ関連のニュースが流れるとき、テレビ画面にコンピュータの出力表示が大写しになることがある。たとえば掲示板の投稿文が表示されるような場合である。それを見ていて何時も気になるのは表示されている日本語の文字が粗いドットで構成されていることである。ドットの数が数えられるくらいの粗い表示なので、初期のドットプリンタの出力のようにさえ見える。字種も“かな釘文字”のようで実に安っぽいフォントが使われている。普通、世の中のコンピュータ利用者はあんなお粗末な字体で画面を見ているのだろうか。
今やコンピュータの出力装置は高精細の表示が可能になっており、それを誰でも利用できる環境にある。その機能が十分に活用されていないのではないか。私は安っぽい字体だと読んでいる文書の内容までも安っぽく見えてしまうので、普段から表示には人一倍気を配っている方なのである。老眼と乱視の度が進んでいるにもかかわらず、できるだけ高精細で緻密な表示を好んで用いるようにしている。最近は明朝体で11ポイントくらいの表示が気に入っている。
周知のとおりHTML言語を用いて文書を作る場合、表示される文字の大きさは6段階程度に変化をつけることができる。しかしHTMLでの指定はあくまでも相対的なものであって、それを読む人はブラウザ上で自分の好みの字種と文字サイズ(5段階程度まで変更可)を指定し表示全体の拡大縮小を指定することができる。したがって作成者が期待した通りの表示で、必ずしもその文書が読まれている訳ではない。
ウェブ上の文書を読んでいると、ときどき表示が乱れているものがある。不自然な場所に改行が入っていたり、一行となるべきところが左右に泣き別れになっていたりする。明らかに文書作成者の想定する文字サイズと、私がブラウザ上で指定する文字サイズが食い違っているのである。そういうとき、いちいち相手の想定したものに合わせるのは面倒なのでついついそのままにしてしまうことが多い。逆に言えば、私の作成する文書も同じように、私が期待するのとは異なる字体で読まれているのであろう。
私のホームページのように文字情報が主となる場合には、改行位置が多少ずれてもそれほど画面が乱れることはない(そのように作っているのだから)。しかし限られた出力幅の中にできるだけきれいに文章を納めたいと思うと結構苦労するところが多い。私はそういう細かい点に昔からこだわる方なのである。
私は文書を公開する場合、自分の好みは一応棚上げし、14ポイント程度の表示を前提にしてHTML文書を作成することにしている。それでも私の期待するような表示で読んでくれているのかどうか、どうしても自信が持てないのである。特にブラウザ上で最大に拡大されたような場合はどうしても画面の構成がくずれてしまい、私の美的感覚では許しがたいものになる。しかも私の苦心の作が、粗いドットのかな釘文字で読まれているとしたら‥‥、いやだなぁと思うのである。
そこで私は、各ページに“スタイルシート”(*)を指定することで、字種と文字サイズを強制的にきめてしまうことにした。利用者の自由度は多少落ちるが、14ポイント程度が保証されていればそれほど読みにくくはなかろうと思ったのである。
そう決心して自分のホームページ上の全文書を見直すことにした。約10年の間に随分と多くの文書を書きためたものである。変更にはかなりの手間を要したが、自分の昔書いた文書を改めて読み直す機会にもなった。
それにしても、人はコンピュータ画面をどんな字体で見ているのだろう?
あぁ、今夜も眠れそうにない。
【注】(*)ここではCSS(Cascading Style Sheet)を指す。HTML言語ではまだ完全にはサポートされていないという説もある。
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