近頃腹の立つことが多い。
つい最近のことだが、早朝のウォーキングの最中に運悪く暴漢に襲われて頭部と顔面をめったやたらと強打されてしまった。鼻骨を折られた上に眼や耳にも裂傷を負い未だにその後遺症に悩まされている。精神的におかしい人が野放しになっていて、しかもバイクに乗って追いかけてくるのだから敵わない。一体、この世の中どうなっているのだろう。
家庭内のことになるが、妻の体調が思わしくない原因が実は10万人に一人の割合で起こるという難病が原因であることを、つい最近本人に告知せざるを得なくなった。実に悲しいことだが、その病気に比べれば私の怪我などはたいしたことではないとも言える。
こういった心の重くなるような事が続いて、さすがにこたえている。私は身辺の何事でもエッセイのネタにしてしまうのだが、この出来事以来すっかり書く意欲を失ってしまった。エッセイのネタなどいくらでもあると予てから広言してきたのに、こうなってみると問題はネタのあるなしではなく書きたい、あるいは人に伝えたいという意欲があるかどうかの問題であるように思われる。しばらくは書く気力もわいてこない鬱々とした状態が続いている。そのためホームページの更新もネタが尽きてきている。
そういった中で唯一、気の晴れることがある。書く意欲が回復するようリハビリを兼ねて今回はそれを紹介してみようと思う。
唯一気の晴れることとは、毎朝行うメールチェックで迷惑メール(スパムメール)を一網打尽に、それこそ一通も残さず廃棄してしまうのに成功したときである。このときだけはすこぶる気分が良い。削除されるメールの数が多ければ多いほど気分が晴れる。前作「迷惑メール」で紹介したように迷惑メールへの対策は大変に難しい。私は、最近はサーバー側にあるメールボックスをメール受信の前に「ちょっと覗く」方法を採用している。メールの件名と差出人名さえ見れば迷惑メールかどうかの判定は容易であるから、必要なものだけを選択的に自分のローカルなメールボックスに受信すればよいわけだ。これで“一発屋”の迷惑メールにも充分に対処することができる。
しかし私に届く迷惑メールの数は、最近は日に40〜50通(*1)程度で推移しているから受信一覧をチェックして取捨選択するのは結構大変な作業になる。そこで、あらかじめフィルターを用いて明らかな迷惑メール(ブラックリストに載っているもの)は早めに削除し検査対象の数を絞っておいてから「ちょっと覗く」ことにしていた。
【注】(*1)これが多いか少ないかは人によって意見が異なるであろう。漸増傾向にあるから数年後には「随分と少ない時代もあったものだ」と振り返ることになるかもしれない。 |
そうやって迷惑メールの削除フィルターを用いていると、人間どうしても全部一網打尽に削除してしまいたいという欲求が出てくるものである。そこで、朝一番でメールチェックを行う前に「ちょっと覗く」方式で“一発屋”のメールがないかどうかをあらかじめ目視で判定することにした。その判別だけなら慣れてくると結構簡単にできるのである。フィルターに引っ掛からない可能性の高いものが大抵は1〜2通発見されるので、それをすかさずフィルターに設定してから削除フィルターを起動させる。これで大抵は一網打尽となる。実に気分が良い。やめられない。
そうやって一網打尽にしてから通常のメール受信を行うと、なんと! メールボックスにきれいなメールは一通も残っていなかったりする。これは少しさびしい。会社を卒業して以来、一日に受信するメールの件数は劇的に少なくなった。大学の授業が休みの時期は学生からのメールもない。したがってメール受信がゼロという日も多くなってきている。
会社時代の先輩、友人達からはいまだに近況を伝えるメールを頂いている。それを読むのが楽しみの一つになっているのだが、いつも読ませていただくだけでは申し訳ない。たまにはこちらからも発信するのが礼儀というものであろう。それが最近は少しも発信できないでいるのである。
ところで、こういった迷惑メールの被害を受ける原因は、主にホームページ上に自分のメールアドレスを公表しているからである。敵(スパマー)はウェッブ上からこういったアドレス記述の部分をプログラムで機械的に見つけ出し、送付先アドレスとして利用しているのである。
その証拠にこんなことがあった。私は自分のホームページのトップに、メールヘッダーの記述を模して更新日時や連絡先等を表示している。そしてその中に冗談で
Bcc:"彼女"<MarilynMonroe@mail.com>
と書いておいたのである。こんなアドレスは実際には存在しないのであるが。
しかしあるとき、もしこのアドレスを誰かに確保されてしまうと冗談が冗談として通用しなくなることに気が付いた。そこで私は、何気なく、‥‥いや‥‥抜け目なく、このアドレスを実際に確保しておいたのである。暇なときに時々このアドレスのメールボックスを覗いてみるとメールが届いていることがある。大抵は迷惑メールである。MarilynMonroeにViagraを勧めている。最近は日本語の迷惑メールも多くなってきていて、MarilynMonroeに援助交際を勧めている。笑わせるじゃないですか。
さて本論に戻ろう。迷惑メールへの対策としては自分のメールアドレスを変更してしまう手がある(先輩M氏もこの手を採用したと聞いている)。この方法は劇的に効果がある。何しろ迷惑メールの数がとりあえずゼロにリセットされるのだから。しかし程なくしてまた迷惑メールが送られてくるようになるであろう。根本的な解決にはなっていないと思うのである。それに何より困るのは、今まで自分が使い慣れていた(正確には、友人・知人が使い慣れていた)アドレスを放棄しなければならない点である。
やはりアドレスは変更しないで対処するのが正解ではないかと思う。迷惑メールへの対応は、これからは“ウイルスメール対策”以上に重要なテーマになるのではないかと思う。これからのメール文化では避けては通れない問題なのである。
ウイルスメールとの大きな違いは、必ずしも迷惑メールが法律違反の行為とは言い切れない面があることだ。そして被害の及ぶ範囲が、ウイルスメールとは比較にならない程広範囲に及ぶ点であろう。現在、各プロバイダが提供していると称する迷惑メール対策はまるで役に立っていないように思う。そのうち、ウイルス対策と同じように有料ソフトで迷惑メール対策をする会社が商売を始めることであろう。それまでは自分で対策しなければならない。困ったことである。そして腹の立つことである。
私は“ホワイトリスト”(受信してもよいメールアドレスだけを登録しておく)方式で友人・知人のメールを間違いなく受信するようにしている。
一方“ブラックリスト”(受信拒否)には、アドレスを直接書くのはまれで普通は正規表現で総称的にアドレスや特定の文字列を指定する。ヘッダー部分に含まれる各フィールド(Subject:, To:, Return-Path:, Message-ID: 等)を選んで木目細かく指定する必要がある。しかしこの記述方法が問題で、私が用いている迷惑メール削除システムで採用している正規表現でもまだまだ機能的に不十分である。かなり高機能の正規表現(たとえばPerl言語で使う程度のもの)でないと私が期待するような記述ができない。
ところで、この“正規表現”についてであるが、その記述法を一般の利用者が習得するにはかなりの困難をともなうと思う。つまり私がやっている迷惑メールへの対策は、誰でもが真似できるものではなく、したがって一般的ではないと言えよう。普遍的な対応策はどういう風なものになるのだろうか。興味のあるところである。■