最近腹の立つこと
(9)

歩道を歩くのが怖い


── 免許自転車 と 無免許自転車

 実に嘆かわしいことだが、最近、歩道上を歩くのが怖いのである。
 家の近くの幹線道路に沿う歩道には、200メートル程の区間、ひと一人通るのがやっとの狭い部分が続いている。車道とはガードレールで区切られているので安全なのだが、他の歩行者と行き違う際はお互いに身体の向きを変えてすれ違う必要がある。ところが、こんな狭い歩道にも自転車が入ってくるから驚きである。何時も怖い思いをしている。ガードレールがあるので自転車が一時的に車道へ避ける訳にもいかず、歩行者たる私の方が、端によけて自転車をやり過ごす必要が出てくる。自転車の方は、恐縮して挨拶してくれる場合もあるが、大抵は当然の権利を行使しているという表情でそのまま通り過ぎていく場合の方がはるかに多い。

 一番怖いのは、後ろから自転車が来た場合である。気が付かないでいるとベルを鳴らされる。場合によっては「邪魔だ」とどやされたりもする。良い年をしたオバチャンから邪魔だと言われたこともあった。私の性格では、そういう時はすぐさま対抗弁論の理論(つまり、言われたら言い返せ)を実践したくなるのだが、喧嘩になるのは明らかだから最近はできるだけ我慢するようにしている。いつまでこの我慢を続けられるか、甚だ疑問ではあるが。

 何も言わずに突然追い越される時は、更に恐怖である。追い越していく自転車の側は、狭い隙間を通り抜けられると判断して突っ込んでくるのだろうが、追い越される側への配慮がまるでない。ぶつからなくても、びっくりした拍子に歩行者は転ぶかもしれない。それなのに振り返ることもなくそのまま走り去っていく。許せない!

 思えば、自転車が一部の歩道(「自転車通行可」と表示されたところだけ)を走れるように法規改定されたのが間違いのもとだったのではないか。それ以来、すべての歩道を走れると勘違いしている自転車(乗り)ばかりになってしまった。

 自転車で公道を走るのに特別な免許はいらない。ただ二輪車に乗るコツさえ身に付けていれば誰でも走行できることになっている。したがって交通法規を全く知らない自転車(乗り)が、歩道を突っ走ったり、赤信号を無視しての暴走を繰り返したりしている。その挙句に歩行者と接触事故を起こたりしているのである。一方では、しっかりと交通ルールを守って車道の左側を走っている自転車(乗り)も沢山いるのだ。そういう人を見かけると、私は逆に尊敬の目で見てしまうのである。

 私は思うのだが、自動車の運転免許を持っている人が自転車に乗れば、多分交通法規を守る真っ当な自転車(乗り)となるのではないか。自転車で暴走しているのは、多分自動車の運転免許を持っていない人ではないか、と私は推測している。こういう人を「無免許自転車(乗り)」と呼び、真っ当な自転車(乗り)を「免許自転車(乗り)」と呼んで区別すべきではないかと思うが、どうであろうか。

 道幅のある普通の歩道上を歩いている時も、私は後ろから無免許自転車が突然ぶつかってくるのではないかと常に恐れているのである。ホント、怖いよなぁ。