(25)脳梗塞の最新治療

(25-1)脳梗塞の最新治療
松井宏夫さんによる解説:【音声ボタン削除

  不整脈の新治療
  ・心房細動というのは、心臓にある心房という部分が小刻みで不
   規則な動きをする不整脈のこと
  ・心房細動になると脳梗塞のリスクが高くなり、その他の脳梗塞
   に比べて重症化しやすい
  ・命に関わるだけでなく一命を取り留めても重篤な後遺症を残す
   ことがある
  ・こうした中で新たなカテーテル治療法が登場した

  心房細動と脳梗塞の関係について
  ・心臓は上下左右大きく4つに分かれていて、左右それぞれ心房
   と心室がある
  ・心房は血液を一時溜めておく
  ・心室は心房に溜まった血液を吸い込んで心臓の外に送り出すポ
   ンプの働きがある
  ・全身を巡って酸素が少なくなった血液は、右の心房に入って右
   の心室から肺のへ送り出される
  ・肺で酸素を一杯吸って血液は左の心房に入り、左の心室から全
   身に送り出される、という仕組みになっている。

  動きのコントロール
  ・この動きをコントロールするのは心臓の中で発生する電気信号
   である
  ・これによって1分間に60-80回、規則正しくポンプのように動
   いて血液を全身に流す
  ・ところが心房細動があると電気信号が乱れて 1分間の心拍数が
   400-600回になる
  ・心房が小刻みに震えると血液の流れか悪くなり血液が澱んでし
   まう

  心房細動という病気
  ・心房細動は決して珍しい病気ではない
  ・原因はいろいろあり、加齢,高血圧,糖尿病,アルコールやカフェ
   インの摂り過ぎ,睡眠不足,ストレス,喫煙などが主な原因とさ
   れている
  ・高齢化の進む日本でも増えている。日本では2010年の患者数
   は80万人以上と推定
  ・60歳を境に増えていく。80歳以上では10人に1人は心房細動
   があると言われている
  ・男女別では男性は女性より 1.5倍発症しやすい

  脳梗塞のリスク
  ・心房細動は重篤な脳梗塞のリスクになること
  ・心房細動になると効果的に血液を送り出せなくなる
  ・すると心臓の中での血液の流れが滞って血液が澱んで血の塊
   (血栓)ができる
  ・血栓は大きいものでは直径数センチ。脳の血管に運ばれて詰
   まると重篤な心原性脳梗塞を起こす
  ・心房細動がない人に比べ脳梗塞を発症する割合は5倍高い
  ・心房細動を原因とする脳梗塞はノックアウト型脳梗塞とも呼
   ばれている
  ・他の脳梗塞に比べ心原生の場合は死に至る可能性が高いから
   ノックアウト型脳梗塞と言う

  防ぐための治療法
  ・防ぐためにこれまでいろいろな有名な治療法が確立されてき
   た
  ・血液の塊ができないようサラサラにする薬(マルガリン)
  ・最近ではドアック(DOAC(直接経口抗凝固剤=Direct Oral
    Anti Coagulants))という薬が出てきた。これまでより出
   血のリスクが少ない。食べ物の影響も少ないので使い易い
  ・血液をサラサラにする薬は生涯飲み続けなければならない
  ・サラサラにする分出血のリスクも出てくる
  ・高齢になると転倒するリスクも大きいので怪我によるリスク
   も大きい
  ・心房細動そのものを押さえる薬もある(抗不整脈薬と言う)
   しかしこれだけでは完全に抑えることはできない上に、逆に
   心不全になるリスクが出てくる

  新しい予防的な治療法
  ・薬の治療が困難な患者に向けてカテーテルを使った治療法が
   ある。その中でも最新で注目されているのはウオッチマンと
   いう医療機器を使うカテーテル治療
  ・心房細動そのものではなく脳梗塞のリスクを取り除く予防的な
   治療
  ・心房細動が起ると、血液が送り出せず血液が澱んで血栓が出来
   やすくなる
  ・できやすい部分が左の心房にある。この場所を
   左心耳(さしんじ)と言う
  ・外から見ると左の心房から耳のように飛び出している部分
  ・内側から見ると壁に穴が空いて隣りに袋状の小部屋がある
   大きさは親指程度
  ・血流が乱れるとここに血栓ができやすい
  ・海外の研究によると心房細動の血栓の 90%は左心耳に認めら
   れた
  ・左心耳でできた血栓は大きくて脳梗塞が重篤になりやすいとい
   う問題がある
  ・このため近年 左心耳を切ったり塞いだりする治療が行われる
   ようになった
  ・左心耳は盲腸のようになくても大きな問題にならないから
  ・予防だけのために胸を開いたり左心耳を手術するのは大変な負
   担になる
  ・そこで開発されたウオッチマンという医療機器を使ったカテー
   テル治療では円形のパラシュートのように開く医療機器で足の
   つけ根の静脈からカテーテルで左心耳に送り込んで、左心耳の
   中で開いて固定させる。するとパラシュートの天井が左の心房
   にあった左心耳への入口を塞いでくれる
  ・1ヶ月もすると完全に心臓と一体化されて入口はきれいに塞さ
   がれてしまう
  ・左心耳で血栓ができるということはなくなって、心原性脳梗塞
   が90%以上も減る
  ・90%以上も減るのだから大きい
  ・カテーテル治療なので治療は1時間程度。翌日から普通に歩く
   ことができる
  ・もう一つのメリットとしては血液サラサラの薬も飲まなくて良
   くなる

  ウオッチマン手術
  ・日本では導入されたばかりだが今年9月から保険適用可能にな
   った
  ・ウオッチマン手術ができるのは、関東近郊では
    慶応義塾大学病院,
    東京医科歯科大学附属病院,
    東邦大学医療センター大橋病院,
    三井記念病院,
    横須賀共済病院,
    筑波大学病院
   などで受けられる