私の本棚 小松崎 茂の世界
私の本棚
(21)

私の本棚:小松崎 茂の世界

── 小松崎 茂の世界「ロマンとの遭遇」

 私の本棚を紹介します。


 第21回は、小松崎 茂の世界を取り上げます。


 今回取りあげる本は、小松崎 茂の世界「ロマンとの遭遇」の一冊だけです。


【解説欄】

▼小松崎茂の世界
 昔、日本中の少年たちが冒険と空想の世界に魅せられ、日々胸躍らせていた時代がありました。漫画絵物語の全盛時代(1950(昭和25)年頃から)があったのです。

 ここで絵物語というのは、物語の文章部分とがはっきりと関係付けられていて、単なる挿絵小説とは異なる形式がとられていました。特に絵は、精密に描きこまれた迫力ある写実的なもので構成されているのが特長でした。山川惣治小松崎茂の作画によるものが最も人気があったと記憶しています。

 以下に、絵物語の例を示します(私の昔の資料から)。


 ( 平原王-2 )     ( 平原王-1) 


 後に、漫画が“マンガ”となり“劇画”ブームが到来すると、気が付くと絵物語というジャンルはいつの間にか消えていました。漫画とマンガ絵物語と劇画の違いについては諸説ありますので、ここではこれ以上深入りはしません。

 そして1990年(平成2年)の初頭だったと思いますが、突然 新聞広告で『小松崎 茂の世界「ロマンとの遭遇」』の発売予告が出現したのです。偶然これを見つけた昔漫画少年の私めは、突然目覚めたように絵物語の時代を思い出し、すぐさま購入することにしたのです。

小松崎 茂の世界「ロマンとの遭遇」
 小松崎茂の作品は、少年向けの月刊誌に発表されるのが普通でしたから、まとまった作品は私の手元にはほとんど残っていません。ただ、昔買った少年向けの雑誌の一部が保管されているのでその中に見ることができるだけです。

 それと比較して、手塚治虫の作品(*1)が手元に沢山残っているのは、実は例外的なことだったのだと実感しています。
【注】(*1)私の本棚(1):「手塚治虫ワールドのすべて」の手塚治虫漫画全集参照。
 インターネットで調べたところ、私の持っているのは初版(1990年4月2日発行)で、その後表紙の異なる版が 2006年3月になって発行されているようです。


以下の絵は「カバーの表表紙」と「カバーの裏表紙」です。


( カバーの表表紙 )



( カバーの裏表紙 )


以下の絵は、カバーを外した本体の方です。「本体の表表紙」と「本体の裏表紙」です。全面青色になっているので見栄えがしません。そこで色調を自然なものに変えてみました。それが緑で枠取りされた最初の画像です。


( 本体の表表紙 )


( 本体の裏表紙 )


以下の絵は、目次の前にある「」の絵です。


( 扉 )


以下は「目次」です。


( 目次 )


以下の絵は、先に表示した「本体の表表紙」の絵ですが、色調を変更しています。

 小松崎茂の絵は多くは戦災で焼失したと言われています。この絵も過去の出版物から復元したものではないかと思われます。詳細に見ると縦に2本の線が入っているのが分かります。大型の口絵を折り畳んだ跡ではないかと思います。折れ目の線の目立つところを補正したように見えるのです。その証拠に2つのサインが記されているからです。1つは1951年の原画作成時のサイン、もう1つは1990年の修正時のサインと解釈するのが妥当でしょう。


( 本体の表表紙 )
(色調を変更)


以下の絵は、本体の表表紙から「ハリケーン・ハッチ」の絵だけ抜き出したものです。私が最も気に入っている絵です(色調を変更しています)。本体の表表紙は、こういう色調で発行して貰いたかったですね。


( ハリケーン・ハッチ )
(色調を変更)


その他、代表的な絵を紹介します。


 ( 地球SOS ) 



 ( なつかしのペン画 ) 



( 大平原児1 ) ( 大平原児2 ) ( 大平原児3 )



 ( 口絵:大和と武蔵 ) 



 ( 宇宙戦艦ヤマト ) 



 ( 勇者ラディーン、ゲッターロボ、ゼロテスター ) 


●著者:小松崎茂氏です。
 小松崎茂氏は、活躍していた当時はほとんど顔写真を公開していなかったように思います。私はこの本で初めて著者の御尊顔を見ることができました。感激です。


小松崎 茂      晩年の写真
(「ロマンとの遭遇」から引用)         



▼小松崎茂のサインについて
 ここで、小松崎茂のサインについて触れておきます。

 「ハリケーン・ハッチ」のところで触れたように、この絵には小松崎茂のサインが二つ記されています。一つの絵に二つのサインがあるのは珍しいことです。そして小松崎茂のサインには、必ず描いた年が付加されています。これは彼が画家だからであって、普通は日付を加えたりはしないと思います。

 私は、小松崎茂のサインを初めて見たとき、その迫力あるサインに驚きました。素晴らしいサインだと思います。成る程サインとはこのように書くものなのかと思い知り、これを真似て自分専用のサインをデザインしたのを覚えています。学生時代はそれを使っていましたが、仕事に就いて海外出張したりアメリカに住むようになってからは、もっと簡便なものに変えてしまいました。

 実生活上で、あるいは仕事上でサインを多用するようになると、複雑でサインするのに時間が掛かるものより素早くサインできるものの方が良いに決まっています。また、自分のサインを他人に真似されたくなかったら簡単なものの方が真似され難いのです。余り複雑なサインは避けた方がよいということを学びました。

 最近、トランプ大統領が「大統領令にサインする儀式」をこれ見よがしにやっていますが、あれは自分を必要以上に重々しく見せるためのもので、こけ脅しのためのサインであるとも言えます。普通に使うサインは簡便なものに限ります。


 ( 小松崎茂のサイン:1951年 と 1990年 ) 



・小松崎茂のサイン、いろいろ
 小松崎茂のサインには、大雑把に言って 3種類くらいのタイプがあるようです。


( 1953年 )      ( 1953年 )  


( 1953年 )       ( 1953年 )  


 ( 1954年 )       ( 1954年 )


    ( 1954年 )   ( 時期不明 ) 



▼本の詳細
(1)小松崎 茂の世界 「ロマンとの遭遇」:1990年3月20日印刷, 1990年4月2日発行, 根本圭助 編, 定価3,800円(本体3,689円) 国書刊行会発行