『続・ソフトウェアの法則』の正誤表

今のところ、誤りは何も発見されておりません。


「心やさしい娘」

 大学生の娘(当時)が、大学の中にある本屋の店先で父親の書いた本を見つけたという。

「平積みになって売っていたわよ」
「そう」
「それも、大江健三郎の本の隣りにあったの」
「へえ〜」

 そこで愚かな父親は考えた。そして、次のような結論を得るにいたったのである。

 あの難解な大江健三郎氏の本を買おうとする人は、間違っても隣りにある『‥‥の法則』などというタイトルの本に関心を向けることはあるまい。一方、最初に『‥‥の法則』という本に関心を向けた人は(そういう人がいたとしての話であるが)その本の稚拙な文体と難解な法則に嫌気がさし、早々に隣りにある大江健三郎氏の本(何という本かは知らない)に関心を移すことであろう。こちらの方がまだ理解できると考えて。これは、十分にあり得ることではないか。

 そうであるとすれば、この場合に得をするのは大江健三郎氏の方であって、決して愚かな父親の方ではあり得ない。

 娘は更に言う。

「どういう訳か、お父さんの本は少ししか積んでないの」
「ふ〜ん」

 そこで愚かな父親はまたまた考えた。そして、次のような冷静なる結論を得るにいたったのである。

 最初は、愚かな父親の書いた本はうず高く積み上げられていたのであろう(いや、絶対にそうに違いない)。しかし娘がその本屋を覗いたときには、たまたま間が悪くて積み上げられた本の山が小さくなっていたのであろうと。

 愚かな父親のこの冷静なる結論に、娘は同意した。

「そうよね。きっと」

 我が娘は心やさしいのである。

 そこで、思い付いた法則を一つ(久し振りじゃのう)。

【売り切れの法則】

『どの書店で“続・ソフトウェアの法則”を捜しても、たった今売り切れたとみえて見当たらない』

【注意】“続・ソフトウェアの法則”の予約注文は受け付けておりません。

(終り)

【注】ジョークの分からない人のために(念のため)。
 “続・ソフトウェアの法則”というようなタイトルの本は存在しません。今後も売り出される予定はありません。