【寿限無寿限無について】
p.121の「ソフトウェアと名前」
p.136 【注】<*10>日本一長い名前
原稿段階で私が用意した寿限無寿限無‥‥は以下のとおりであった。
“寿限無寿限無五劫の摺り切れ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝る所に住む所ヤブラコウジのブラコウジパイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助”
(106文字)
これに対し、中央公論社編集部が独自に確認してくれたものが初版に記載されている以下のものである。
“寿限無寿限無五劫のすり切れ海砂利水魚の水行末雲行末風来末食う寝る所に住む所ヤブラ小路ブラ小路パイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命長久命の長助”
(106文字)
どちらが正しいのかは分からない。そこで私は、落語のプロつまり落語家に実際に聞いてみようと思い立ち、三遊亭円丈師匠にメールで問い合わせてみた。するとうれしいことに、懇切丁寧なご教示をいただけた。
それによれば、落語というものは口写し(ママ)で伝える芸であるから、意外とどう表記するかは、いい加減というか無頓着なところがあるのだそうである。「たらちめ」という古典落語があるが、その中で「‥‥キンたらんと欲す!」というセリフがあったので「きんたらんと欲す」とはどういう意味かと、教わった円生に聞いたところ「知らない!」といわれたとか。
他のどの先輩に聞いても誰も知らない。つまり誰も知らない言葉が堂々と演じられているのである。途中で一部間違って覚えてしまうと、以後そのまま伝えられたりして元が何だったのかは分からなくなってしまうらしい。
したがって“寿限無”も正確な表記というものは、音として正しければそれでよいのではないか、ということでした。私の原稿段階のものは正確であるとのこと。ただ、「やぶらこうじにぶらこうじ」の部分を漢字にするかどうかだと思う、とのことでした。
なに? 「やぶらこうじにぶらこうじ」だと? なるほど。円丈師匠は「やぶらこうじのぶらこうじ」ではなく「やぶらこうじにぶらこうじ」と伝えられたものとみえる。
【ピカソの本名について】
p.121の「ソフトウェアと名前」
p.137 【注】<*11>ピカソの本名
ピカソの本名として
「パブロ・ディエゴ・ホセ・ツランチェスコ・ド・ポール・ジャン・ネボム・チェーノ・クリスバン・クリスピアノ・ド・ラ・ンチシュ・トリニダット・ルイス・イ・ピカソ」
と記したが、この出典は新聞で見た広告欄の記述をメモしておいたものがもとになっている。したがってその信憑性にはいささか疑問なしとしない。しかもスペイン語のカタルーニャ地方の方言を日本語でカタカナ表示したものである点も気になっていた。
そこで「ピカソ画房」(http://www.picasso.co.jp/)に問い合わせたところ、名前を知るための手がかりとなる各種の情報を提供していただいた。それによると次のような興味深い結果が得られた。実は、二種類の名前が存在するのである。
A:「Pablo Diego Jose Francisco de Paula Juan Nepomuceno Maria de los Remedios Cipriano Santisima Trinidad Ruiz y Picasso」
B:「Pablo Diego Rivera Jose Francisco de Paula Juan Nepomuceno Maria de los Remedios Cipriano de la Santisima Trinidad Ruiz Picasso」
もっと面白いのは、A氏は1881年10月25日生まれであるのに対し、B氏は1881年11月25日生まれとなっている。どうやら、ピカソ氏は二人いたものとみえる。
なお、『ピカソ 天才とその世紀』(マリ・ロール・ベルナダック/ポール・デュ・フーシェ著 高階秀爾監修 (株)創元社)によれば、ピカソの本名は「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パオロ・フアン・ネポムセノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・シプリアノ・デ・ラ・サンティッシマ・トリニダッド」となっている。