素歩人徒然 哲の守備力 川上選手の守備は下手だった?
素歩人徒然
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“哲”の守備力


── 川上選手の守備は下手だった?

 元巨人軍監督の川上哲治氏が亡くなった。
 現役選手の時代には“赤バットの川上”と“青バットの大下”と並び称され、日本中の野球ファンの人気を二分していたものである。
 監督になってからは長嶋、王を擁して9連覇を成し遂げたが、メディアへの情報管理は徹底して厳しく、鉄カーテンならぬ“哲”のカーテンと呼ばれていた。

 川上選手の赤バットは、実は赤ではなくどちらかと言えばチョコレート色っぽい茶色のバットであった。一般のファンが「赤バット」と言っても彼は何も言わなかったが、メディア関係者が言うと「赤ではない!」とすぐ訂正したそうである。

 ところで、川上氏に関するな論評を色々と見ていると、打者としての川上監督としての川上の話は数多く出てくるが、一塁手としての守備の話はまるで出てこない。何故か? それは川上一塁手の守備が恐ろしく下手だったからである。

 野手がボールを一塁に投げるとき、川上一塁手のグラブにスッポリと納まるようなストライクでないと川上御大から睨まれることになる。ショートバウンドするようなボールを投げたりしたらそれこそ一大事である。しかし高い球ならそれほど睨まれることはなかったようだ。普通、高い球ならベースから足を離してでもジャンプしたりして捕球しようとするものであるが、川上選手は決してそのようなことはしなかった。ボールが一塁ベース近くに届く前に彼はクルリとボールに背を向け、ボールが転がるであろう方角に向けて一目散に走り出すのであった。本来、そちらの方は捕手がバックアップにまわることになっているから、一塁手の務めはボールをとにかく止めて打者の進塁を防ぐ努力をすべきなのである。しかし彼はそれをしなかったのだ。

 川上選手の動作を遠くから見ていると、一塁手にはとても取れないような大暴投だったように見える。それが彼の狙いなのだ。ジャンプして取り損ねたりエラーする危険を冒すよりもボールを投げた野手の責任にしてしまった方が面倒がない。16の背番号を揺らしながら、そして少し“がに股”でボールを追いかけようとする後ろ姿がTV画面に映ると、私は「あっ! またやっている」と思ったものである。しかしTVの解説者は決してそのことに触れようとはしなかった。

 もしこの文を熱心な巨人ファンが読んだら、さぞかし憤慨するに違いない。“打撃の神様”に向かって何と言うことを言うのか! と。最悪の場合、名誉棄損あるいは侮辱罪で訴えられるかもしれない。私の方も、防衛するための守備力を整えておかねばなるまい。

 名誉毀損は、刑法230条1項に「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮亦は50万円以下の罰金に処する」と定められているから、事実を述べていても罰せられるのである。刑法231条の侮辱罪にあたる可能性もある。

 もし訴えられたら“アンチ巨人”の有能な弁護士が必要になるかもしれない。そのときは「高校時代の友人M弁護士が適任である」とある友人から教えられた。心強いことではないか。
 最悪の場合には亡命という選択肢も考えておくべきかもしれない。それには、中学時代の友人I氏がオーストラリアに住んでいるから、オーストラリア政府に亡命申請してもらうという手もある。良い友人を持つと心強いものである。このように我が方の守備体勢は万全である。