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文書を読ませるコツ
── 長過ぎる文書は誰も読まない
(長文です)
最近、本が売れていないという。特に紙の本を読む人が少なくなったような気がする。その代わりに電子書籍が読まれているのならよいのだが、必ずしもそうとも言えない。誰もが携帯端末を持ち歩き、始終画面に視線を落としているが大抵はゲームをやっている。文章を読んでいても、それはメールの文面であったりすることが多い。
最近の私は、紙の本もネット上の文書もともに読んでいるが、ネット上の文書を読むときはサラッと斜め読みする癖がついてしまっている。一方、紙の本を読むときは、自然に集中度が高まり精読するのが習慣になっているようだ。この差はどこからきているのだろうか。
私の考えでは、文書を作成した人への信頼度の差ではないかと思う。出版された紙の本ともなれば、必ず編集者や査読者がいて複数の人間による内容のチェックが行われている。それだけ内容への信頼度は高いと言える。
分厚い本であっても、最初から読む覚悟があって読み始めたのだから(途中で挫折することはままあるが)兎にも角にも最後まで読み通そうとする覚悟だけはできている。そして首尾よく読了すれば、かなりの知識が得られることも分かっている。作者が著名な人なら、その可能性はかなりの確率で保証されていると言えるであろう。
それに対し、ネット上の文書は読んでみないと分からない。誰の査読チェックも受けていない可能性が高いから、内容的に信頼するに足るものかどうか甚だ疑わしい。電子書籍であっても、誰の査読も受けずに簡単に出版できる時代である。
しかも、読了するまでにどの位の量の文章を読まされるのかも明確でない。どんな成果が得られるか分からないまま、大量の文章を読まされるのはつらいことである。作成者の名が分からない場合は、作者不詳の文章を読まされているのとたいして変わらない状態になる。仮に作者名が分かっていても、ネット上では信頼度の確認までは難しい。
ネット上でたまたま出会った文書と、特定のテーマに絞って探し続けた結果出会った文書とでは、読む側が持つ熱意・意欲にも大きな差が生ずるのは明らかであろう。普段、サラッと斜め読みしたくなるのは仕方のないことである。
このように、紙の本の文書とネット上の文書とでは、その読まれ方に著しい差があることが分かる。したがって、ネット上で文書を公開する者は、自分の文書をしっかりと読んでもらいたければ何らかの工夫をしなければならないことになる。
まず、人に読んでもらいたければ、文書をできるだけ短くすることが重要である。ネット上では「長過ぎる文書は誰も読んでくれない」と覚悟すべきであろう。これはSNSの影響かもしれないが、短い文章で歯切れよく、全体をコンパクトにまとめないと読んではもらえない時代である。長い文書だと“tl;dr”とされてしまうからだ。つまり“Too long; didn't read”の略で、「長すぎて読まなかった!」と言われてしまう。メール文化が盛んになった頃、メールで報告する際に何でも添付ファイルで送りつけておけば報告したことになると勘違いしていた時代があった。読んでもらえなければ、結局は何も報告しなかったのと同じなのである。
タイトルも含めて「冒頭の数行の書き方で勝負は決する」と思わなければならない。しかし、「文書は短くすべし」と主張しながら、その本人がこうやってダラダラと長い文章を書き連ねているのが実態である。自分の意見を間違いなく読者に伝えたければ、たとえ長文になろうとも誤解されないよう詳しく書かなければならない。これは難しい選択だが、本当に必要なら長くなるのを躊躇すべきではない。
この文章の冒頭に(長文です)という断り書きを付しておいたが、これが最低限実行すべき礼儀作法である。
私はネット上に文書を公開するときは、次のような方法を取っている。
(1)適度な長さの文章を作ったら、まずそれをブログ上に公開する。
(2)次にフェイスブック上に、その要約を数行にまとめて公開する。このとき、更に詳しく知りたいと関心を持ってくれた読者に備えて、ブログ上の文章を読めるようリンクを張っておく。
(3)1〜2週間すると書き直したい部分が出てくるものである。ブログの文章全体を見直して完璧なものにし、自分のホームページ上に掲載する。
フェイスブックに掲載した記事は、時間とともに掲示欄の底の方に沈んでいって再び読まれる可能性はなくなる。ブログの記事も同じように底に沈んでいくが、普通はブログアーカイブとして日付順に管理されているから比較的簡単にサルベージできるものである。それでも、その記事の存在を知らないと探し出すのは無理であろう。検索ソフトに拾ってもらうのを期待するしかない。
一方、ホームページ上に掲載する場合は、しっかりと構造を決めて整理・分類されていれば、一般の読者でも後から容易にその記事を見つけ出してもらえる利点がある。検索ソフトに見つけ出してもらえるよう複数のキーワードを設定しておくこともできる。
どうです、貴方(女)も試してみませんか。![](images/BlockSK.jpg)
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