アナログ写真の思い出
── アナログ写真の焼き付けと引き伸ばし
デジタルカメラの普及にともない、写真(静止画や動画)を撮ったりそれを表示して楽しんだりすることが昔と比べて格段に容易になった。今や写真画像を誰でも簡単に取り扱うことができる時代である。もし写真画像を今のように容易に扱えなかったら、SNSの世界もそれほど広くは普及しなかったのではないかと思う。
アナログの時代からカメラを愛用してきた私は、カメラの技術進歩を目の当たりにしてきたので、この辺りでアナログ写真に関する思い出(ほとんど静止画ばかりであるが)をまとめておこうと思う。同時に、昔からやっていた写真撮影での前準備や後処理で苦労した際の詳細を忘れないよう記録しておきたいと思う。
▼使用したカメラ
私がアナログ写真の撮影に使用したカメラを以下に列挙する。
(1)レオタックス(Leotax):主に学生時代に使用した。
(2)キャノン(Canon Pellix):企業人になってから購入。海外出張中に頻繁に使った。
(3)キャノン(Canon A-1):望遠レンズ、ストロボ付き
(4)ペンタックス(PENTAX ESPIO 120Mi):
(5)キャノン(Canon snappy 20):
(6)富士フィルム(EPION 100):NHKで講演した時のお礼として頂いた。薄謝協会とはよくぞ言ったもの。新しいタイプのカメラだったので使ったことはない。
取扱説明書類
▼写真撮影とその前準備
(1)フィルムを選ぶ
どんな場所で何を撮影するかに依存して最適のフィルムを選択する必要があった。感度(ASA/ISO 100など)、解像度、サイズ(135..24/36枚撮り)などを考慮して選ぶ。私はパトローネ入り(フィルム・カートリッジ)の35mmフィルムを使っていた。
フィルム・カートリッジ
(2)カメラにフィルムを装着する
昔のカメラは、フィルムを狭い隙間から差し込むようにして装着しなければならなかった。うまく装着できずに何度も苦い思いをしたものだ。
カメラの底部を開いてフィルムを装着する
フィルム端の片側を切ってリーダーとし、カメラの巻上げスプールのスロットに差し込む。フィルムを送るためのパーフォレーションの穴を所定の位置にしっかりと噛み合わせないと空回りしてしまう。それに気が付かずに蓋を閉じてしまうと撮影後に取り出そうとすると、何も写っていないだけでなく装着途中のフィルムが露光してしまうことになる。その瞬間にすべてがオシャカになってしまうのである。逆に、これをうまく装着できるようになると、リーダー部分が節約できて36枚撮りのフィルムでも37枚は撮影できるようになる。
(3)撮影中の迅速なフィルム交換
フィルムを使い切ったら新しいフィルムと交換しなければならない。野外の撮影では、交換作業は明るい太陽光の元でやることを覚悟しなければならないから、撮り終わったフィルムを外し新しいフィルムと交換する作業を手際よく行う必要がある。これがスマートにできないと、フィルムの一部が露光してしまったり運が悪いと写真撮影の努力がすべて無駄になることもある。
(4)写真撮影:必ずレンズキャプを外す!
うまく写真を撮るにはどうすればよいか、と聞かれたプロの写真家土門拳氏は「先ず、レンズキャップを外しなさい」と答えたという有名な話が残っている。これは名言であると言われていた。
しかし最近のカメラ事情しか知らない人にとっては“何を馬鹿なことを”と思われるかもしれない。当時のカメラは、光の入射経路がファインダーとレンズは別系統だったのでキャップをつけたままでもシャッターが切れたのである。初心者の撮影ではそういう失敗が多かった(えっ? 私はそんな失敗しませんでしたよ、私は!)。
その他、以下のことに配慮する必要がある。
(5)写真撮影:絞りとシャッター速度を決める
(6)写真撮影:“焦点深度(*1)”という概念をよく理解した上で、焦点を合わせる最適の場所を決める(まだ自動焦点などという便利な機能はなかった)
【注】(*1)焦点深度とは、ピントが合っている位置から距離があってもピントがシャープに見える(つまりピントが合っているように見える)範囲を言う。一般に絞り値が大きいと深度も深くなる。
(7)写真撮影:画面の構図をよく考える
(8)写真撮影:シャッターチャンスを逃さない(*2)
こういった事項を常に頭に入れておかないと写真撮影はうまくいかないのだが、今では(8)だけ注意していれば何とか写真らしきものは撮れる。楽なものだ。
【注】(*2)デジタル画像での撮影では、シャッターチャンスを逃さないようにするのがすべてである。特に静止画を撮るのであれば構図などあまり気にしなくてよい(プロレベルの人は、この文章を読んで眼を剥いたりしないでください。私のような素人カメラマンレベルではこの程度で良かったのです)。
デジタルカメラでは、解像度を高く設定しておけば、撮影後の処理で適当にトリミングすることにより結構良い写真が撮れるものである。
(9)カメラの関連部品、アクセサリー類を紛失しないよう管理する
▼撮影後の処理
(1)フィルムの現像(写真屋に依頼する)
撮影済みのフィルムは、パトローネごと写真屋に渡すと、数日後にベタ焼き(いわゆるコンタクトプリント)と簡易なケースに収められたネガフィルムを受け取れる。このケースに撮影データ等を記録して保存する。
(2)選択してプリントする(これも写真屋に依頼する)
ベタ焼きからプリントすべきものを選ぶ。
ケースにサイズとプリントして欲しい枚数を記入(サービスサイズ等、縁あり/なし等を指定)して再度注文を出す。
(3)自分でプリントする場合
・焼き付けと引き伸ばし作業
私は写真の焼き付けと引き伸ばしは、普段は写真屋に頼むことにしていた。しかし写真が大量になるとプリント代がばかにならない。大学時代の山登りや、夏季の合宿山行では大量の写真を撮るのでプリント代を節約するため自分で焼き付けと引き伸ばし作業をするようになった。しかし最大の理由は、自分でトリミングなど自在に行って大きな素晴らしい山岳写真を作りたかったのである。
引き伸ばし機は少し高価だったので兄に買ってもらい、暗室はないので夜間家の風呂場で引き伸ばし作業をしたものである。大学の写真部の暗室を借りてやったこともあった(私は部員ではなかったが)。
・印画紙を選ぶ
サイズと感度を決め、必要なものを用意する(まとめ買いをするため、神田によく買いに行ったものだ)。
印画紙の号数は数字が大きくなるほどコントラストが高くなる。通常は3号か2号を使用していた。
引き伸ばし機にフィルムと印画紙を装着して露光する訳であるが、もはや細かい作業は思い出せない。概略、以下のようになる。
▼前準備
暗室内は赤色灯の下で作業を行う。ネガをネガキャリアに挟んで引き伸ばし機に設定し、印画紙を置くイーゼルは引き伸ばし機の台上に置く。拡大されたネガの像のピントを合わせる。
▼露光
像の大きさとピントが決まったら露光する。
▼現像
露光が終わったら印画紙を現像液のバットに入れる。像が現れてくる。
▼停止
現像が終わったら印画紙を取り出し停止液に移す。
▼定着
停止が終わったら、停止液をよく切って定着液に入れる。
▼水洗
定着が終わったら水洗用バットに移す。
▼乾燥
水洗が終わったら乾燥させる。これで完了です。
もはや細かい作業手順は思い出せない。ただ、露光時間を決めるのが一番難しかったことだけは覚えている。写真で一番難しいところは何かと聞かれたら、今でも私は迷わず「引き伸ばし時の露光時間の選び方」と答えるだろう。
▼自分で引き伸ばした作品
(1)大学時代の北アルプス山行の記録から
前穂高岳 唐沢岳 北穂高岳
(2)大学時代の北海道旅行の記録から
利尻島のベースキャンプ地
釣り(利尻の子供達と)