素歩人徒然 PC MAGAZINE 投稿 初めての英文投稿
素歩人徒然
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PC MAGAZINE


── 初めての英文投稿

 アメリカのパソコン関係のコンピュータ雑誌と言えば「BYTE」や「PC MAGAZINE」が有名であるが、私がPC MAGAZINEに出会ったのは、1982年にHoustonで開催されたNCC(National Computer Conference)の会場でだった。沢山のパンフレットを集めた後で、その内容を確認していると立派な雑誌が一冊出てきたのである。表紙に山高帽を被ったチャップリンの姿が描かれているのが印象的であった。


 記事の内容も素晴らしかった(*1)。当時の日本の一流コンピュータ雑誌と比べても、どれも比較にならない程の充実した内容だった。私は帰国後、すぐさま定期購買の手続きを取ることにしたのである($54/12部だった)。
【注】(*1)タイトルマークの下に“The Independent Guide to IBM Personal Computers”と記されているように、当初は IBM PC 用のガイド本を指向していたようである。
 しかし残念なことに、私が手に入れたのは PC MAGAZINE の創刊号ではなく第3号(Vol-1 Num-3)だった。本当は創刊号から買い揃えたかったのだが、当時は遠く離れたアジアからアメリカの最新のコンピュータ事情を知るにはかなりのハンデがあったのである。
   
Vol-1 Num-1     Vol-1 Num-2

 以来、私は PC MAGAZINE 誌の熱心な読者となり、私的にも仕事上でも貴重な情報源として活用させてもらうことになった。

 ところで、PC MAGAZINEには当初から読者の投稿欄があった。それを読んでいるうちに私も自分で投稿したくなってきた。実は、私は昔から投稿するのが大好きだった。子供の頃は漫画を描いては投稿し、長じて企業人になってからも、あるテーマで自分の意見を表明したくなると文章にして投稿するのが趣味の一つになっていた。現在のSNSの時代を生きている若者たちならこの気持ちを即座に理解してくれると思うが、当時はなかなか理解されない時代だったのである。

 企業に勤めていると、仕事に関わるものを会社の許可を得ずに勝手に外部に公表することは許されない。必ず「社外発表許可申請」のような書類を作って会社から許可を得てから投稿する必要があった。ただ、仕事に関係しない趣味の領域の投稿程度なら大目に見てもらえたので、最初の頃は会社名を出さずに匿名(ペンネーム)で投稿していたものである。採用されるかどうかも分からないものを許可申請する程の自信も勇気も私にはなかったのである。

 そういう前歴があったので、英文雑誌の投稿欄を見た私がアメリカの読者に負けじと自分も投稿したいと思ったのは、むしろ自然の成り行きであったろう。

 私が最初に投稿したいと思って選んだテーマは、バッチファイルをベースにした「シェルプログム」の技法を紹介することであった。
 当時のパソコン環境では、ようやくメインフレーム並みのプログラム言語が使えるようになった時代だった。まだ大型ソフトウェアの開発に必要な環境が整っているとは言えなかった。大きなプログラムを複数のモジュールに分け、それを多人数のチームで開発するには、いろいろな種類のプログラム言語とツール類を同時に操作できるような一段上のレベルのプログラムが必要になる。メインフレームの環境では、シェルプログラムがその役割を果たしていた。最近は、これをスクリプト言語と称しているが。

 当時のパソコンOS(MS-DOS等)にはそれが欠けていた。OSに対する指示(コマンド)を単に書き連ねるだけのバッチファイルという機能しか用意されていなかった。しかしこれをうまく活用すれば、シェルプログラミングまがいのものを記述することができることを示したかったのである。

 このような意図で作成された投稿が運よく採用され、1991年の PC MAGAZINE September 10, 1991(*2)に 掲載された。
【注】(*2)PC MAGAZINE Volume 10 Number 15 LAN-TO-LAN - 386SX PS/2s September 10, 1991」: User-to-User ■BATCH FILE TECHNIQUES:These formatting techniques make batch files look like high-level language programs. (by Shun kinoshita Kawasaki-shi, Japan) 」p459〜p460

 ここに、投稿文と Neil J. Rubenking 氏の解説文から成る全文を掲示します(だだし、私の文章中の英文のつづりのミス(“indentation”としたものが“indention”になっている)は、私の責任ではなく編集側のミスによるものです)。