大谷伝説について考える 大谷翔平 トラウト 大谷マナー 大谷効果 WBC MLB
素歩人徒然
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大谷伝説について考える


━━ 大谷マナーから大谷効果へ

▼筋書きを作ったのは誰か?
 2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が侍ジャパン優勝という劇的な形で幕を閉じてから、もう数ヵ月が過ぎようとしています。あの直後に私はスポーツ誌を購入して関係する記事を読んだり、あるいはウェッブ上の記事や写真を見て大いに楽しい思いをしてきました。今でも、当時の記憶を思い起こして何時までも飽きることがありません。

 SNS上では、最近はスポーツ関係の記事が多くなっているので、関心のあるテーマを見つけるとリンク先の元データの方を読みます。アメリカのスポーツジャーナリストが書いた記事の紹介だったりすると英文記事の方を読み場合もあります。
 SNSの記事は入れ替えが激しいので以前読んだ記事をそうとは気が付かずに繰り返し読まされることもありますが、同じような記事を読まされていても一向に飽きることがないから不思議です。

 WBCでの日本の勝利はあまりにも劇的過ぎて「一体誰がこの筋書きを作ったのだろう」と思うことがあります。まるでマンガを読んでいるようだと言う人もいます。こちらの期待した通りに物事が進んで行くと、何かマンガ本の筋書きを見ているような気がしてくるからでしょうね。

 4月になるとメジャーリーグの試合(MLB)も始まり、WBCで活躍した選手の話題は自然とメジャーの話題へと移っていきました。大谷選手の話題もWBCからメジャーリーグでの活躍へと変わっていきました。アメリカのジャーナリスト達が書いたもの、あるいは既に引退したMLBの名選手(レジェンド)達の発言も聞こえてくるようになりました。そして、私もその関係の記事をよく読むようになりました。

 彼らは「オータニのプレイを普通だと思ってはいけない」とか、「我々はいま伝説を見ているのだ」と主張する人もいます。つまり、将来伝説となるであろう“オーニサン”のプレイを、今しっかりと見ておくべきだ、見逃してはいけない(!)と言うのです。

 どうやら大谷伝説は“2023年のWBCから始まった”ということになっているらしいです。WBCでの活躍も大谷伝説に含まれることになるのなら、私にはもっと深掘りしておかないといけない話題があるように思うのです。

▼私が目撃したこと
 ここでは、私が目撃した大谷選手の姿からその実像に迫ってみようと思います。「目撃した」と書きましたが、私は残念ながら生の大谷選手を直接見ていた訳ではありません。すべて“デジタル回路を経由した情報”ばかりです。

(1)勝利の瞬間に思ったこと
 WBCでの勝利の瞬間、大谷選手は雄叫びを上げながら自身のグラブと帽子を放り投げていました。その光景を見たとき私は「この人は最初から筋書きを詳細に書き上げていたに違いない」と確信したのです。

 その瞬間と言っても実際には数秒という短い時間内に私の頭をよぎった感想ですから背景説明を加える必要がありますね。詳しく書くと以下のようになります。

・勝利の瞬間に大谷選手は何を考えていたか。多分、3塁側ベンチから侍ジャパンの選手たちがマウンドに向かって飛び出してくるだろうから揉みくちゃになる。そうなれば、グラブや帽子はどうなるか分からない(*1)。そう考えて大谷選手はあらかじめ帽子(*2)とグラブ(*3)を渾身の力を込めて遠方に投げ捨てたのだと思います。(帽子は、後にアメリカ野球殿堂博物館に収蔵されました。グラブ(New Balance社製の大谷選手特注品)も回収され大谷選手の手元に戻っています)。
 これらは明らかに最初から準備していた行動だと思います。最初にハグするのは女房役の捕手(*4)と決めていたふしもあります。
【注】(*1)何も対策しなければ行方不明になったり踏みつけられて傷つくことになるかもしれない。
 北京オリンピックの陸上400メートルリレーで日本チームは銅メダルを獲得したが、最終走者が喜びのあまりリレーのバトンを放り上げて行方不明にしてしまった前例もある。


【注】(*2)帽子は、後にアメリカ野球殿堂博物館に収蔵された。



【注】(*3)グラブ(New Balance社製の大谷選手特注品)は回収され大谷選手の手元に戻っている。


【注】(*4)中村悠平選手。
 彼の最大のミスは、優勝が決まった後でもキャッチャーのマスクを外し忘れたことである。


・優秀な選手はプレイ中は常に“次にやるべきこと”を考えながら行動しています。大谷選手も勝利した瞬間に頭を切り変えたはずです。彼の筋書きに書かれていた通りに、やるべきことを確実に片付けてから歓喜の渦に飛び込んでいったのでしょう。あの無駄のない素早い動作を見て、私は、これは最初からすべて決めておかなければできないことだと思いました。

 捕手の中村選手も優秀な選手ですが、あの時は“ 次にやるべきこと” を忘れていたようです。まずマスクを取るべきでした。将来子供たちに、あの場所に居たのか? と聞かれたら‥‥。一生後悔することになるかもしれませんよ。

・しかし全体の筋書きがあるとしたら、それを一人の人間の力だけで作れるものではないでしょう。侍ジャパンの関係者から得られる個々の記憶、あるいはここで取り上げた“私の目撃したこと”のような第三者による情報などが集約された形で、後から構成されていくものではないでしょうか。

(2)オータニとトラウトの関係
 最後に討ち取られたトラウト選手は、WBCでの大谷選手との対決について後に詳細を語っています。

 「ショウヘイとはどこかで必ず対戦することになると思っていたから心の準備はできていたよ。早いカウントで投げてきた2つの直球(4シーム)は打てるボールだったのに俺は空振りしてしまった」

 「ショウヘイとはエンジェルスの練習でも対戦したことがなかった。だから守備側でしかアイツのピッチングは見たことがなかったんだ。でも、今回のことで初めて打者の気持ちが分かったよ。1球でも見逃しちゃいけないんだ。追い込まれたら、必ずあのスイーパーかスプリットが来るからね」

 「最後はスイーパーが来るとは正直思っていなかった。今思えば、それを予想していなければいけなかった。ストライクゾーンの内側からギリギリで外側へ逃げていくような“エグいボール”だった」



 最後に、
 「望んだ結果じゃなかったけど、俺は楽しかったよ。本当に世界中のベースボール・ファンが望んでいた対戦だったと思うよ」と語っています。

 リーグ屈指の強打者トラウトが“投手大谷”について、どう評価しているかを率直に述べているのですが、これを読みながら私はWBCの始まる前の ある出来事(以下に示す)を思い出していました。

(3)大谷選手の言葉
 大谷選手がまだアリゾナのキャンプ地でWBCに参加するためのトレーニングをしていた頃のことです。大勢の記者やチームメイトの見ている前でピッチング練習をしている様子がテレビ・ニュースで流されていました。

 テレビの解説では、大谷選手はトラウトから「一度、バッターボックスに立たせて欲しい」と言われたそうです。しかし大谷選手はきっぱりと断ったという話を紹介していました。

 日頃から仲の良い二人のことですから、私は快く承諾したのだろうと思っていましたからその反応は意外でした。しかし今思い返してみると、後にアメリカとの決勝戦の直前に語った「今日一日だけは彼らへの“憧れを捨てて(*5)”勝つことだけを考えていきましょう」という大谷選手の言葉がありましたよね。侍ジャパンの仲間たちに話していた場面を思い出したのです。彼はキャンプ地にいる頃から既にそれを意識して行動していたのです。
【注】(*5)しかし私には、侍ジャパンの面々が決勝戦の日に本当に“憧れを捨てて”行動していたとは思えません。なぜなら、後で聞いた話では、侍ジャパンの誰かが「トラウト選手のサイン入りボールが欲しい」と通訳の水原一平さんに依頼したのだそうです。誠実な一平さんのことですから早速トラウトに頼んでくれたのでしょう。その結果、侍ジャパン全員へ(栗山監督の分も含めて!)プレゼントとして、彼のサイン入りボールが決勝戦の日(!)に届けられたのだそうです。トラウト選手の誠意に感動しなければおかしいですよね(どうでも良いことですけど)。
(4)エグいボールとは
 トラウトが「エグいボール」と評した球種は、日本ではスライダーと呼ばれています。日本人には、スライダーにもいろいろな種類があるというのが共通認識となっていますが、アメリカではこの魔球を「スイーパー」と呼んで区別しています。そして最初にこの球種を投げたのはダルビッシュ選手だと言われています。

 ところで“エグいボール”とはどういう意味なのか、日本の若者言葉にある「えぐい」という表現と同じなのでしょうか。しかしその前に、英語では何と発音するのでしょうか。

 2022年のシーズン中のことですが、デトロイト・タイガースにコディ・クレメンス(大投手ロジャー・クレメンスの息子)という選手がいます。彼は本来は外野手なのですが、その日は大量リードを許して敗戦濃厚の局面で突然投手として起用されました。そのときの相手が打者大谷選手だったのです。そして残念ながら大谷選手は、コディの超スローボールで見事三振に討ち取られてしまいました。

 コディはそのときのボールを記念のために“私物化”することにしました。つまり伝説的な選手から見事三振を取ったという記録を物として残したかったのでしょう。

 そこで彼はそのボールを、こともあろうに三振に討ち取った大谷選手のところに持ち込んでサインをおねだりしたのです。大谷選手はそれに応えてサインして返却しました。そのサイン入りボールの写真がテレビで紹介され、人々の知るところとなりました。そのボールに“エグい”の英語表現が書かれていたのです。

 テレビの説明では「なんてエグい球なんだ!」と書かれていると紹介されました。ボールには大谷選手の英字による文章とサインが書かれていたのですが、私には文章の綴りまでは読み取れませんでした。後で調べてみたら“What a nasty pitch!”と書かれていたらしいのです。

 私はそのとき初めて“nasty”という表現を知ったのです。逆に言えば“nasty”の日本語訳は“エグい”となる、と理解したのです。この日本語訳を大谷選手に教えたのは、もちろん通訳を務めている水原一平さん以外にいないでしょう。

 nastyは、本来は「きたない」とか「意地の悪い」という意味で否定的な表現として使われていましたが、最近では「すごい」という褒め言葉としても使われるようになっているそうです。日本語の「やばい」にそっくりですね。「やばい」も本来は否定的な意味を持つ言葉だったが、若者の間でいつしか褒め言葉として使われるようになりました。いまでは「美味しい」という表現の代わりに「やばい」が使われています(若者たちは日々「ヤバいよ、ヤバいよ」を連発しています)。

(5)デッドボールを回避する
 2023年のシーズン中、アスレチックスの左腕投手 ケン・ウォルディチャックの投げたボールがすっぽ抜け、大谷選手の顔面付近を通過するというプレイがありました。しかし驚異的な反射能力で危うくデッドボールを免れた大谷選手は「ハッ!」と声を発しながらヘルメットを飛ばして勢いよくバッターボックスから飛び出し、そのまま1塁ベースの方向へ身体を屈めながら逃れるようにゆっくりと移動しました。そして本塁と1塁間の中央あたりで立ち止まると、今度はゆっくりと歩きながら時間を掛けてバッターボックスへと戻ってきたのです。この間に彼はデッドボールに対する“恐怖と怒り(多分)”とを鎮静化して何時もの柔和な表情に戻っていました。そして自軍ベンチに向かって「大丈夫だ」と合図したのでした。私が、新たな“大谷マナー”を見た瞬間でした。多くの選手にこれを見習って欲しいものです。

▼大谷マナーから大谷効果へ
 これまで紹介してきた “私が目撃した” ことの多くは、スポーツに関心のある人なら誰でも知っていることばかりだったかもしれません。大谷選手の一挙手一投足は、メディアには “ほぼ全面的に” かつ “好意的に” 取り上げられているのが最近の傾向です。ここでは、その好意的に受け取られた大谷選手の行動様式を “大谷マナー” と呼ぶことにしましょう。

 アメリカでも大谷選手はベースボールが好きな子供たちの憧れの的となっていますから “大谷マナー” を見習おうとする人が増えてきています。たとえば、大谷選手の “ごみ拾い” は有名です。“大谷マナー(ごみ拾い)” を見習って最近ではトラウト選手もごみ拾いを実践しているようです。これぞ “大谷効果” と呼ぶべき現象ではないでしょうか。

 MLBでは、2023年からは毎シーズ、すべてのチーム間の交流戦(*6)を行うことになった。これからは誰でも地元チームと戦う大谷選手の活躍をリアルで見ることができるのです。そうなると、大谷マナーを見て “かっこいい” と真似をして育った子供たちが増えていくことでしょう。メジャーリーグのファン層も大幅に変わっていくことになると思います。
【注】(*6)メジャーリーグでは、アメリカン・リーグとナショナル・リーグの2つのリーグがありますが、インターリーグ(リーグ間の交流戦)はこれまでは一部のチームの組み合わせに限られていました。
▼大谷選手の貢献を期待する
 大谷選手を見ていると、彼と接する周りの人たちが自然に和やかな雰囲気に変わっていくように見えます。試合中でも大谷選手が出塁すると、相手チームの野手たちが親しげに近づき話しかけたがっている様子が見えるのです。

 ビジターの立場で相手チームの地元に行き試合をするときでも大谷選手は別格で、誰からも熱烈に歓迎されているようです。“出まち”している人たちも見かけます。こういう現象はアメリカでは珍しいことだそうです。そういう場面を見るにつけ、大谷選手という人は不思議な雰囲気を醸し出す人のように見えるのです。
 そういう掛けがえのない人物を、我々はもっと活用するべきではないでしょうか。以下に例示してみましょう。

(1)乱闘回避策
 ベースボールの世界は厳しい世界です。特にアメリカでは、デッドボールを与えたりすると必ず仕返しされるのを覚悟しなければなりません。しかし仕返しをされるのは、必ずしもデッドボールを与えた投手に対してのみ為されるのではありません。関係のない“他の有力な選手”が仕返しの対象となり、意図的にデッドボールを食らったりするのです。そして多くの場合、それが発端となって乱闘が始まるのです。そうなると自軍選手を守ろうとベンチから飛び出し、試合はそっちのけで両軍入り乱れての殴り合いへと発展してしまうのです。

 こういうときは両軍ともベンチに居てはいけません。残らず全員がグラウンドに出て相手と戦わねばならぬ事態となります。それが不文律となっているようです。参加しないと罰金ものなのだとか。私はこのルール(?)がどうしても理解できません。子供には見せられない場面だと思います。

 大谷選手がエンジェルスに移った初めての頃ですが、私は大谷選手がこの種の混乱に際してどのように行動するかに関心を持って見ていました。彼もベンチを飛び出して乱闘に加わろうとしていました。大谷選手が怪我でもしたら一大事ですから、通訳が専門の水原一平さんも抜かりなくベンチを出て大谷選手を守ることに専念していたようです。

 大谷選手は乱闘の渦の一番外側に居て相手選手とは直接接触しない位置にいました。後で考えると、それは一平さんが大谷選手の後ろにぴったりと付き添って乱闘の渦の中心部に近づけないように(多分)後ろから引っ張っていたためではないかと推測しています。

 “大谷マナー”を見て育った子供たちが、将来 野球選手となる頃にはこんな場面は見ないで済むようになって欲しいものです。そのためには、“新たな大谷マナー”として「乱闘回避策」を発掘して欲しいと思います(*7)。それを見た子供たちが「かっこいい!」と思い、自分もそのように行動したいと思うような“素晴らしいマナー”でなければなりません。もしそうなったら、デッドボールに起因する乱闘事件は少なくなり、それは“大谷効果(乱闘回避策)”のお陰だと言えるようになるに違いないと思うのです。
【注】(*7)誰からも好意的に見られている大谷選手に対してデッドボールを仕掛ける投手などいないだろうと思っていたのですが、甘かったようです。  先日、大谷選手がホワイトソックスのマイケル・コペック投手から、右ふくらはぎ付近にデッドボールを受ける場面を見てしまいました。かなり痛そうでした。  そのとき大谷選手は、顔を真上に向けて痛みをこらえ、片足で小さなジャンプを繰り返して打撲部分を守りながら少しずつ立ち位置を移動していました。右足を引きずるようにしてインフィールドから出てベンチの方に向かい、次に1塁ベースの方角へと少しずつ位置を変えていったのです。そして最後に1塁ベースに達しました(まだマナーと呼べる程洗練された動きではなかったですが)。  これが将来“大谷マナー”が生まれるためのヒントになるかもしれません。(1)真上を見て投手の方は見ない(痛さをこらえる方に集中する)、(2)とにかく1塁ベースの方角へ向かう、のがよいと思いました。
(2)審判への敬意
 アメリカの審判はかなりいい加減です。見ていて不愉快になることが多いです。何とかならないものかと常々思っていました。何か気に入らない行為があると直ぐルール違反を宣言したりします。あるいは不都合な判定を下したりする場合もあります。当然相手の監督は黙っていません。激しくクレームを付けていると、たちまち退場を宣告されてしまいます。

 大谷選手も最初の頃はいろいろと不利な判定をされていました。大谷選手の素晴らしいところは、今ではしっかりと審判対策に取り組んでいることです。それは“大谷マナー(審判への敬意)”を見ていると明らかです。毎回バッターボックスに入る前に審判に軽く挨拶をしています(*8)。いつも相手に敬意を払って不利な判定をされないように努めているのです。そのためには相手と親しくして打ち解けて話ができる環境を作ろうと努力しているようです。これも最近では“大谷効果”となっているようです。
 新たに導入された“ピッチクロック(*9)”については、まだまだ安心はできない分野ですが。
【注】(*8)日本の高校野球並みですが、彼は帽子を取ったりはしません。ヘルメットのひさしに軽く手を触れ会釈する程度です。
【注】(*9)投手はボールを受け取ってから、走者がいない場合は15秒以内に、走者がいる場合は20秒以内に投球動作に入らなければなりません。違反するとボールが一つ追加されます。
(3)ベンチ内をきれいに
 “大谷マナー(ごみ拾い)”を見るにつけ、私は何時も思うのですが、何故 彼をしても「ベンチ内をきれいに清掃する」という問題の解決に貢献できないのか、と。テレビによく映るベンチ内の様子を見ていると時間の経過とともに汚れが酷くなっていきます。それがテレビ画面で丸見えなんです。どうにかならないものでしょうか。

 ベンチの通路には紙コップやヒマワリの種の殻が直接捨てられますから汚れが目立つのです。ごみ拾いの得意な大谷選手でもこればかりは一人では手に負えないようです。

 ヒマワリの種(の中身)は私は食べたことがないので分かりませんが、さぞかしおいしいのでしょう。そのためベンチ内で禁止できないのだろうと思っていたのですが、どうもそういうことではないらしい。禁止するとベンチ内を清掃をする人の職業を奪ってしまうことになるのが問題で、結局は禁止できないのだと言うのです。

 これはアメリカと日本との職業に関する考え方の違いによるものかもしれません。しかしそういう職業があるからと言って、ヒマワリの種の殻をペッペ、ペッペと吐き捨てて周辺を汚し続ける彼らの考え方には到底ついていけないですね。少しでも清掃の手間を省いてあげようとは考えないのでしょうか。どんなにベンチ内がきれいでも清掃係りの人は必要です。一応は清掃状態の確認をする必要がありますからね。そのへんの考え方の差なのかもしれません。

 ラグビーやサッカーの試合で日本人の観客(最近はサポーターと呼ぶらしい)が客席をきれいに清掃してから帰るのは有名です。最近は、主役である日本人選手も自ら使ったロッカールームを完璧に清掃し、感謝の言葉をメモに残して帰ることも評判になっています。

 それに対して、日本人が清掃係りの職業を奪ってしまったという話はついぞ聞いたことがありません。新幹線の折り返し運転に備えて客席を短時間に清掃するJRスタッフの神業サービスも有名ですが、たまたま汚れていなかったから清掃をやめました、という話も聞いたことがありません。ゴミがあるかないかに関わらず清掃しているはずです。

 メジャーリーグのベンチ内も、できるだけ汚さないようにしようという考え方で充分対応できるのではないかと思います。

 ヒマワリの種に負けないような“日本のおいしいお菓子”を大谷選手に贈るのはどうでしょうか。大谷選手は甘いもの好きだそうですが、体調を考えて食べるのを我慢しているそうです。日本から甘いお菓子が送られてきたら自分では食べずにロッカールームやベンチに置いてチームメイトに食べてもらうに違いありません。

 ヒマワリの種のおいしさがどの程度のものなのか、私にはまったく分かりません。しかし日本のお菓子ならこれを駆逐できるのではないでしょうか。もし成功したら、更に相手チームのロッカールームやベンチにも置いてもらえば大成功 間違いなしなんですけどねぇ〜。

 どうでしょう、大谷効果を期待するこの提案(!)。