素歩人徒然 コンピュータショウ 記録を残す
素歩人徒然
(41)

コンピュータショウ


── 記録を残す

 最近、新しいコンピュータ(ノート型パソコン)を購入した。今まで使っていたマシンが古くなり、さすがに性能的にも限界に近づいていることをかねがね実感していたので、ブロードバンドの時代でもあるし、ここらで少し高性能のマシンに切り替えようと思ったのである。最近のコンピュータは、コンピュータ自身のイノベーション(革新)は重要度が低くなり、むしろトラフィックのイノベーションがコンピュータの中身を変えていく時代だと言われている。なるほど、新しいマシンにはネットワークの時代に必要なものが基本的に装備されている。私は大いに満足したのであった(この満足が、いつまで続くことやら‥‥)。

 私はこれまで自分が使用したり開発にたずさわったコンピュータ(*1)を、できるだけ保存するよう努めてきた。いずれは個人的な「コンピュータ博物館」のようなものを作りたかったからである。しかし家に保存するにしても、残念ながらそういった古いコンピュータ類は家族の者からは無用の長物として邪魔物扱いされるのが常であった(彼らには、その価値が分からないのだ)。コンピュータ博物館など実現できるはずのない夢であることは、私自身分かり過ぎるくらい分かっている。そういった訳で、そろそろ古いマシンを処分するしかあるまいと観念するに至ったのである。

【注】(*1)私が開発にたずさわったコンピュータは、大型、中型、小型といろいろあるが、私的に保存できるのはもちろん超小型のラップトップ型やノート型パソコンばかりである。

 何時の頃だったか、大型ごみの回収が有料になったとき(正確にはその直前に)、処分するなら今しかないと自ら判断したのである。そこで、捨てる前に一応全部のマシンをデジタルカメラで写真撮影し、ほとんどのものを泣く泣く廃棄処分にしたのであった。個々のマシンにはそれぞれ忘れがたい思い出や愛着がある。しかし日本の狭い住宅事情では、これもやむおえぬことだと自らを納得させたのであった。

 古いマシンを整理しながら私は思った。コンピュータの歴史は高々40年である。それなのに自分が開発に携わったマシンの開発年代など、私はとうの昔に忘れてしまっている。もちろん初代の携帯型日本語ワープロ(*2)、初代ラップトップ型パソコン(*3)、初代ノート型パソコン(*4)などの年代は分かっている。しかしそれに続く後継機や改良版として開発されたマシンについては何時頃開発したのか、どうもさっぱり思い出せない。マシンにインストールされたソフトウェアの痕跡を調べても年代測定には何の役にも立ちはしない。ハードウェアに詳しい人ならコンピュータ内部のボードを見て、そこで使われている部品から開発年代を推測することはできるかもしれないが。
 木の年輪による年代測定法のような便利な物差しを持たない我々は、常々正確な記録と資料を残すよう努力するしかないと実感したのであった。

【注】(*2)Rupo JW-R10:1985年
   (*3)T-3100:1986年
   (*4)T-1100:1985年, DynaBook J-3100SS:1989年

 ところで、このデジタルカメラで撮影したコンピュータの画像を利用して、私はウェブ上に“コンピュータ博物館”のバーチャル版を作ることにした。博物館にしては展示品の数が少ないと言われそうなので、私は“My Personal Copmputer Show”(*5)と名づけることにした。現在パソコン24台、ワープロ5台、その他(*6)が展示されている。このショウの展示品の中には、好事家が欲しがるような代物が含まれているらしく、ときどき海外から譲ってくれないかという打診が来るから面白い。もちろん相手にはしない。

【注】(*5)“Personal”は“Computer”ばかりではなく“Show”
     の方をも修飾している点に注意。
   (*6)五珠のそろばんやカリュキュレータ等である。

 この私的なコンピュータショウに、私のくだんの新マシンも早速展示することにした。使用中のマシンでも直ぐ展示できるのはバーチャル展示ならではの利点であろう。時間のある方は是非一度覗いてみてください。なつかしいマシンを発見できるかもしれませんよ。■