素歩人徒然 原因の究明 花粉症はなぜ発症しなかったのか
素歩人徒然
(71)

原因の究明


── 花粉症はなぜ発症しなかったのか

 環境省が今春の花粉の飛散が終息する時期を発表した。それによると、地域によって多少の違いはあるものの概ね4月下旬には終息するそうである。花粉症に悩まされる季節もこれでやっと終わることになる。私は毎年、花粉症で悩まされてきたが、意外なことに今年は何の症状も出なかった。私にとってこれは特筆すべき出来事なのである。この様な経験は今までに一度としてなかったと記憶している。なぜそうなったのか、その原因をつらつらと考えてみた。

 以下のような原因が考えられる。
(1)花粉の飛散量が例年に比べて劇的に少なかった
(2)年齢を重ねたので症状が出なくなった
(3)新しい点鼻薬を使ったことによる効果
(4)寝具に付着するハウスダストを徹底的に取り除いた

 まず(1)の飛散量だが、今年はニュース等であまり花粉のことが取り上げられなかったような気がする。それは飛散量が少なかったからなのか、それともインフルエンザ等の他の出来事が多かったせいなのか、そこのところはよく分からない。多分、今年は飛散量が極端に少なかったのではないかと思う。

 (2)の年齢によるものかもしれない。ある年齢(人により異なる)に達すると突然症状が出なくなるという経験談をよく耳にすることがある。私もそういう年齢に達したのかもしれない。もしそうなら、発症しないこと自体は嬉しいが、老齢に達したことの証しということになるから複雑な気持ちになる。

 次に(3)は、治療薬の進歩によるものである。毎年、医者から薬を処方してもらっているが、残念ながらそれが効いているという実感はまるでなかった。それでも毎年薬をのみ続けてきたのは、もし薬をのまなかったらもっと症状が酷くなっていたかもしれない、という思いがあったからである。薬をのんでいたからこそ、症状が軽くて済んでいたのかもしれない。のみ薬の他に、時々は点鼻薬を処方してもらったこともあるが、これはすぐ薬がなくなってしまい長続きしなかった。まじめに使い続けてきたとは言えない。

 ところが今年は、点鼻液として一日一回(左右交互に1噴霧ずつ2回で、計4回)の噴霧で1容器当たり4週間(!)はもつという薬を処方されたのである。これを真面目に噴霧し続けてきた。朝1回「シュッ、シュッ」とやればそれで終わりである。怠け者の私には最適の薬であった。この薬による効果が出たと思いたいところだが、それではあまりにも劇的過ぎる。そんなに急に効く薬はかえって心配になる程だ。

 最後の(4)について、これは布団、毛布、タオルケット等に付着しているハウスダストがアレルギーの原因になると言われているので、それへの対策をしたのである。
 寝具の手入れや季節ごとの入れ替えは、昔から家内にまかせてきたのでその点への私の関心は薄かった。ところが、ここ数年家内は病気でそういうことが一切できない身になってしまった。そこで、家内の指示にしたがって私が一人でやっていたのである。季節ごとの布団、毛布、タオルケットの入れ替えは、ほこりを吸い込まないようマスクを着けて作業するほどの注意を払ってきた。ここ数年、それを続けていながら、私は気が付いていない点があったのである。

 私のアレルギー症状は春と秋の2回、季節の変わり目に起こることは以前から自覚していた。しかしそれが、寝具を入れ替えた直後に起こっていたことに迂闊にもまるで気が付いていなかったのである。自分で入れ替え作業をするようになって2〜3年経ってから、ハタと気が付いたのである。なぜ今まで気が付かなかったのか。実に迂闊であった。
 これは寝具に付着しているハウスダスト(主に家ダニの死がいであると言われている)が原因でアレルギーが起こっているに違いない。夜、寝ようとして寝床に入ってから具合が悪くなることがしばしばあったことも思い出された。そこで、布団を入れ替える時に、強力な掃除機を用いて徹底的にハウスダストを除去することにした。布団や毛布の裏と表を、それからベッド周辺を徹底的に掃除したのである。これが功を奏したのかもしれない。

 これらの原因と思われる項目の内、いずれが花粉症の発症を防ぐ上で効果があったのか、今のところ定かではない。しかし多分、来年にはある程度明らかになるのではなかろうか。私の予想では、(3)(4)のいずれかではないか、あるいはその両方かもしれないと思っている。
 しかし、往々にして問題の原因が複合的に関わっていることがよくあるものだ。一つの原因で、事がすべて解決するという程単純なケースは稀ではないかとも思う。私が関わってきたコンピュータのソフトウェア開発という分野では、トラブル発生の原因は、大抵は各種の要因が複合的にからまって問題発生に関係していることが多かった。その教訓に従えば、そう単純な理由だけで物事がすべて解決するとは思えない。まだ気が付いていない別の要因があるのかもしれない。たとえば黄砂の影響、気候の変動などいろいろと考えられる。来年もまた根本的な解決には至らない恐れもあるので、注意深く原因の究明に当たろうと思っているところである。■