素歩人徒然 自転車との接触を防ぐ 護身用の杖
素歩人徒然
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自転車との接触を防ぐ:護身用の杖


── 自転車との接触を防ぐ法

 先日、ウオーキング中に自転車と接触し怪我をしてしまった。
 暑さのため熱中症に対する注意が叫ばれている時期に、何もウオーキングなどしなくても… と言われるのは重々承知しているが、私は毎日運動して汗をかかないと気がすまない性格(たち)なのである。

 多摩川のサイクリングロードを1時間ほど歩いて帰路につき、家の近くの幹線道路沿いの歩道を歩いているときに事故は起きた。この歩道は幅2メートル以上もある広い道なので普段から自転車もたくさん走っている。私はその道の右側を行儀よく歩いていたのである。向こうからも同じ側を歩いくる人が目に入ったので、遠慮深い(?)私めは早めに進路を中央側へと少し移すことにした。後ろから来る自転車や人に注意を払いつつ徐々に進路を左側へと移していった。相手とすれ違う間際になって、前方から突然自転車がやってきて、すれ違う直前の二人の間をS字型に蛇行しながらすり抜けていったのである。自転車はスピードを出しておりかなり危険な行為ではあったが(よくあることで)何事もなくやり過ごすことができた。しかし次の瞬間、その自転車の陰からもう1台、小学生らしき子供の乗った自転車が現れ、同じスピードで同じようにすり抜けようとした。私の振りだした右手の甲とその自転車の右ハンドルの先端とが激しくぶつかり、一瞬「ペキッ!」という音がしたような気がした。しかし相手は振りかえりもせず、そのまま走り去ってしまったのである(親子連れだったのか?)。

 右手の甲を見ると、拳頭(人差し指と中指の根本)の関節部付近が打撲でみるみる膨れ上がってきている。指は動くので骨折の心配はないようだが、これほど急激に腫れあがるのを見るのは2度目の経験であった。1度目はアメリカでの自動車事故のときであったから、それを思い出して精神的にもかなりのショックであった。急いで家に帰り患部を保冷剤で冷やし応急手当を行った。

 それにしても、この程度の打撃でこれほどの怪我になってしまうとは予想外のことであった。打撲が原因でかなりの内出血をしているように見える。外部からの打撃に対して著しく弱くなっているようだ。齢を取ったせいもあるが、実は私は日頃から抗凝血薬を飲んでいて、血液を固まり難くしておく必要がある身なのである。その結果、切り傷や内出血などではなかなか血が止まらないというやっかいな身体なのである。もっともっと気を付けて行動しなければと反省した次第である。

 歩道上での自転車の怖さについては、以前「歩道を歩くのが怖い」で述べたことがあるが、後ろからやってくる自転車の怖さについて言及したものであった。しかし最近は前から来る自転車の方が怖い。それも若者だけでなく、女子学生、子供、家庭の主婦の乗る自転車の方がはるかにぶつかってくる頻度が高いのである。その原因は、自転車の荷台に置いてある物、あるいは子供を乗せるための補助具等が両側に飛び出していて、それがすれ違いざまにこちらにぶつかるケースが多いからだ。このようなとき、相手はぶつかったという認識がない。ハンドル部分さえ無事に通れば、それより後ろのことは自分には一切関係のないことで御座んす、という訳である。
 自分には責任がないと思うから大抵はそのまま行ってしまう。こちらは腕や肘の辺りに被害を受けるが泣き寝入りするしかない。

 思うに自転車(乗り)の側からは、歩行者というのは“腰の幅”しか意識する必要のない単なる障害物と見ているのではないか。それ以外の空間は全部自分が通ることのできる空間であると思っているふしがある。その結果、自分の自転車のハンドル部分が通過できる隙間さえあれば、絶対にすり抜けられると信じて猛然とその狭い空間に突入してくるのである。“腰の幅”の外側には腕が振り出される領域があることなど全く予想していないらしい。少なくとも“両肩の幅”を持つ障害物と認識してほしいのである。

 以来、歩道上を歩いているときは、より一層自転車が怖くなってきた。これからは、両腕の肘から下の部位を衝撃から守る工夫をしなければならない。
 いろいろ思案した結果、家にあった女性用の杖を利用しようと思い娘に相談したところ大反対されてしまった。自転車にぶつかると相手の自転車の方が危険だと言うのである。そうかもしれないが、こちらの命も掛かっているのである。何か良い護身用具(プロテクター)はないものだろうか。

 いろいろ考えた末、やはりこの杖を利用するしかないと思うようになった。この杖は家内が使っていたものなので、女性用でかなり派手な模様が付いている。男が使うにはすこし恥ずかしいが、そうも言ってはいられない。逆に、目立つ方が安全のためには良いかもしれないと思うことにした。
 全長が74センチで4つの節があり、使わないときは5つ折りにすることができる。写真のように先端の節を一か所だけ折って、52センチ長にすると丁度自分の肩幅と同じくらいになることが分かった。これを横向きにして両手で持ち、いざという時にはベルト付近に構えて防御に用いることにした。


(私の護身用の杖)

 以下に使い方のコツを列挙する。

普段は右手に下げて持ち、後方から来る自転車に注意を促す(写真(1))。
前方から自転車が来たら、できるだけ早い段階で杖を横向きにし、両手でしっかりと保持する。
両手で持つ位置はベルトの下あたりがよい(写真(2))。すれ違う際に必要なら上下に保持位置を変えて身を守る。
自転車の動きに注意を払うのは当然であるが、決して自転車を走らせている人と視線を合わせてはならない。
(特に女性は、歩行者の方がよけてくれると期待して突き進んでくるから、帽子等を目深に被ってこちらが自転車の存在そのものに気が付いていないという振りをして歩き続けることが大切である)
十分に広い歩道上で自転車1台、歩行者1人の状況であっても決して気を許してはならない。後方の状況によっては、すれ違う直前にお互いに接近せざるを得ない状況になるかもしれないからである。
特に子供の運転する自転車は、突然に方向を変えることがあるから注意が必要である。守るべき位置も下になる(写真(3))。

このように、自転車の存在には常に厳しく対応するが、歩行者には逆に最優先で進路を譲るよう心がける。

   
(1)下げて持つ   (2)対大人用自転車 (3)対子供用自転車

 これまでのところ、大変うまく試用されているように思う。
 中学生の乗る自転車の集団(5,6人)が三列縦隊で走ってきたことがあった(多分、楽しくおしゃべりをしながら、だったのだろう)。こちらの姿に気が付くと彼らは一斉に車列を崩し一列になって通り過ぎて行った。実に気持ちのよい見事な“すれ違い”であった。しかしこれは私の持つ護身用の杖による効果ではなく、もしかすると、そういう躾け教育を受けていたのかもしれない。